介護報酬と見守り機器

見守り機器導入で夜勤加算要件緩和?~平成30年度介護報酬改定~

「3年に1度」を目安に行われている介護報酬制度の改定ですが、2018年(平成30年度)の改定が開始されました。今回は改定内容の一つである「介護ロボット(見守り機器)の活用の促進」の「夜勤職員配置加算の要件緩和」について、クローズアップしていきます。
この改定は介護ロボット(見守り機器)の導入によって、夜勤職員配置加算の要件が緩和されるというものです。ここでは緩和が適用される内容について、具体的な見守り機器の商品の紹介と共にまとめていきたいと思います。

2018年介護報酬改定の内容と見守り機器

まずは、介護報酬改定の内容について解説します。介護報酬改定は、大きく分けると下記のように4つの分野に分類できます。

介護報酬改定の表

「介護ロボット(見守り機器)の活用の促進」は、この4つのうちの1つである「3 多様な人材の確保と生産性の向上」の中の項目に当てはまります(※図表赤文字)。そしてこの「介護ロボット活用の促進」の詳細こそが、「見守り機器を導入した場合の夜勤職員配置加算の要件緩和」という、今回のテーマに関連する項目です。
では「見守り機器による夜勤加算の要件を緩和」とは、具体的にどういった内容なのでしょうか?次の項目で見ていきましょう。

見守り機器導入による夜勤加算要件緩和の詳細

要件緩和は、夜勤職員配置加算が行われている「特養(特別養護老人ホーム)とショートステイ」を対象としています。要件緩和の条件を満たす施設については、今までの要件よりも緩い基準で介護報酬加算を得ることができます。

要件緩和の条件

具体的な要件緩和の条件としては、以下の3つが必要となります。それぞれ見ていきましょう。

【1】最低基準より0.9名分人員を多く配置

まず一つ目は、夜勤に必要な人員の最低基準(最低配置人数)より、0.9名分人員を多く配置することです。特別養護老人ホームの夜間勤務は、入居者数に応じた介護職員の「最低配置人数」が定められていることはご存知かと思います。今までの加算条件では、この「最低配置人数」を上回る職員を一人以上追加した場合に、介護報酬が加算されていました。今回の要件緩和では、一人以上ではなく0.9人以上の追加でも報酬が加算されることになりました。

見守り機器の導入で介護報酬加算要件緩和の詳細イメージ

人数が報酬の基準を満たしているかどうかの計算は、夜勤時間帯(午後10 時から翌日の午前5時までを含む連続した16 時間)における一ヶ月あたりの看護・介護職員の延夜勤時間数を、その月の日数×16時間で割った人数(1日平均夜勤職員数)を元に判断されます。
この計算をわかりやすくした例によると、見守り機器導入で追加配置した職員の勤務時間を、今までの基準より約1割短くしても加算が取れるような見込みとのことです。上図の例においてみると、48時間分が削減できる形になります。

【2】入所者数の15%以上に見守り機器を設置していること

見守り機器を入所者数の15%以上に設置のイメージ

二つ目は、見守り機器の導入です。ここでいう「見守り機器」とは、ベッド上の入所者の動向を検知できる機器のことを示します。
ベッドからの転落・徘徊などによる離床を、遠隔で把握できる仕組みとなっています。利用者の15%以上に導入しなくてはならないので、例えば入所者20人の施設であれば特に介護度の高い3人を設置の対象にすれば、要件緩和になるということでしょう。
また、見守り機器にはバイタル測定システムを搭載したタイプも多く登場しており、利用者のバイタル情報をデータ記録として残して記録業務負担軽減にも繋がります。いち早く体調の変化や異常に気づけるようにもなります。

【3】見守り機器使用に対する委員会を設置すること

最後の三つめは、見守り機器の使用に対する委員会を設置する必要があることです。これに関しては、見守り機器を設置したらそれでOK!あとは何もしなくてもいい!という訳ではないということです。
設置した見守り機器を安全かつ有効に活かすために「どうすべきか?改善点はあるか?」など、運用に必要な検討を随時行う必要があるということでしょう。


以上3つを満たしていることが、介護報酬の夜勤職員配置加算要件緩和に必要な条件となります。では、見守り機器の導入により介護報酬加算の要件が緩和されることで、介護施設にとってどういったメリットがあるのでしょうか?次の項目で詳しく見ていきましょう。

見守り機器導入によるメリット

見守り機器導入によるメリットは、介護報酬加算要件の緩和だけではありません。見守り機器の導入には、介護施設にとってどんなメリットがあるのでしょうか?具体的に見てみましょう。

【メリット1】業務負担の軽減と人件費抑制

メリットの1つ目は、介護施設とスタッフ双方の負担軽減です。
スタッフの負担軽減としては、「巡回頻度を下げる」「利用者の状態を把握してから対応する」などの業務効率化が期待できます。見守り機器の活用により、少ない人数で同等以上の業務を行うことが可能になるかもしれません。
介護施設の負担軽減に関しては、運営に必要な人件費の削減が期待できます。今回の改定により、0.1人分の配置を削減しても介護報酬加算の対象になるためです。

【メリット2】介護の質・施設価値の向上

メリットの2つ目は、見守り機器を用いることで常時見守りが実現し「介護の質が向上」「施設価値の向上」を実現できる点です。
たとえば離床センサーは、ベッドからの転倒・転落や徘徊などのヒヤリハット事件を未然に防ぐことに繋がります。バイタルセンサーを用いれば、心拍・呼吸数などを命に係わる数値に問題がないかを離れた場所から確認可能になります。
こうした見守り機器の導入により、夜間の巡回頻度を最小限にできます。ベッド近くでの状態確認のために入所者と過剰な接触をする必要がなくなるので、入所者を起こしてしまったり不眠にさせてしまうリスクも減ります。呼吸困難で自力でナースコールの呼出しができないような状態の場合でも、自動で緊急呼出しが可能です。利用者やその家族の安心度UPに繋がるので、介護の質向上ひいては施設価値を上げることにも繋がります。

実証事業の結果にて、既に効率UPの傾向が?!

実際に、見守り機器導入による効果が出ている施設の例もあります。厚労省は昨年11月末に行われた社会保障審議会・介護給付費分科会の会合で、今年5月から特養など30施設で行っていた実証事業の結果を公表しました。

介護報酬改定見守りによる効果

上記図の通り、見守り機器の使用後は「夜間のナースコールでの呼び出しが少なくなった」「職員による訪室の回数も減少した」という報告がされています。
また、訪問回数が減れば職員の巡回の音や気配で目を覚ます利用者も減り、安眠できる人が増えます。見守り機器は介護側の負担軽減はもちろんのこと、利用者側にとってもメリットが大きいと言えるでしょう。

具体的な見守り機器商品をご紹介

見守り機器の商品

ここまで介護報酬改定と見守り機器の概要やデータについて述べてきましたが、具体的に見守り機器にはどんな商品があるのでしょうか?
対象となる商品については明示されていませんが、ここでは厚生労働省「介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業」にて使用された、すでに販売されている見守り機器をご紹介致します。

ベッドで全てが把握できる!「見守りケアシステム」とは

見守り機器の条件に当てはまる商品として注目されているのが、ベッドで利用者の状態や動向を把握することができるフランスベッド(株)の「見守りケアシステム M-2」です。
「見守りケアシステム M-2」は、ベッド利用者の離床動作を検知して通知するベッド内蔵型の見守りロボットです。
起き上がりや離床を通知するだけでなく、身体を動かすことが困難な方の体重を毎日測ることができる「体重測定機能」や、介助時や食事の際にセンサー機能を一時停止しても再度検知を開始する「自動見守り再開機能」を標準搭載している点が特徴です。
利用者の動向はもちろんのこと、詳細な状態まで確認することができるため、見守りの現場での活躍が期待されています。

ナースコールとの連携でより便利に

フランスベッド(株)の見守りケアシステムは、ナースコールシステムとの連携が可能です。
連携することで、心拍・呼吸数や温度・湿度、離床等を24時間365日センサーが見守る「ナースコールシステムで施設まるごと見守り」が実現します。
ナースコールシステムと連携した集中見守り管理システムなら、利用者の状態に異常があった場合にすぐスタッフにお知らせできます。巡回回数の削減による負担軽減と、常時見守りによる早期対応が実現します。

▼見守りケアシステムのナースコールシステム連携については、こちらをご覧ください

ベッド見守り型ナースコールシステムを開発|第三のナースコール「Yuiコール」
株式会社平和テクノシステムは、自社のナースコールシステム「Yuiコール」とフランスベッド株式会社の「見守りケアシステム M-2」の連動させたベッド見守り型ナースコールを開発しました。

まとめ

最新の見守り機器の導入で、介護現場を変えていく!

今、急速なスピードで進む高齢化社会とは裏腹に、介護施設では人員確保が難しい状況が進んでいます。こうした厳しい介護施設の状況を救うために、介護スタッフの業務をサポート・負担軽減を可能にするICTを活用した見守り介護や介護ロボットが注目されています。
2018年度の改定にて、介護ロボット・ICT活用を活用している施設に対しては「介護報酬や人員基準の緩和をする」という導入がされました。厚生労働省の実証研究でも、見守りロボットによって介護職員の負担や介護事故が減少するという結果も出ていることから、今後の展開に更に期待が高まります。約3年毎に行われている介護報酬の改定…次回の改定は2021年度です。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う介護事業者への影響もある昨今、どのような方向性で見直しが行われるのか要チェックです。
また、今回ご紹介した見守り機器は一例で、他にも各社から様々な製品が登場しています。下記記事では、私たちが展示会で見てきた最新の見守り機器について紹介しています。よろしければご参照ください。

ケアテックス2018で見た高齢者見守りの最新機器!
ケアテックス東京2018で見た最新の高齢者見守りシステムをご紹介。介護施設の業務負担軽減、事故リスク低減をする見守りシステム。施設価値の改善を考えている方、新しい技術をチェックしたい方は是非一読してください。


▼参考文献

[1]厚生労働省:「平成30年度介護報酬改定について」

[2]厚生労働省:「介護人材関係について」