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職業病?介護職が腰痛になる業務・予防方法・対策【まとめ】

介護職の職業病と言っても過言ではなさそうな腰痛。厚生労働省の「業務上疾病発生状況等調査(平成29年)」によると、特定の仕事が原因で起こる病気や負傷などのうち、6割以上を占めているのが腰痛とのこと。更に業種別に見ると、最も腰痛の発生が多いのが介護の仕事を含む「保健衛生業」となっており、介護職の腰痛との関連性の高さがうかがえます。
そこで今回は、介護職が腰痛になりやすい理由から介護職を腰痛から守るための予防対策についてまで、まとめてご紹介したいと思います。

腰痛は介護職の職業病?!

冒頭でも述べた通り、介護職と腰痛は切っても切れない関係にあります。
なぜ介護職が腰痛になりやすいかというと、介護業務においては腰部に過重な負担のかかる作業が多くあるためです。そのため、厚生労働省によると高齢者介護などの社会福祉施設での腰痛発生件数は、大幅に増加しているとのこと。
介護職員が腰痛になると、長期休業や離職に繋がってしまうことがあります。深刻な人手不足を抱えている介護業界にとって、介護職の腰痛は大敵です。まずは介護職員の腰痛発生を予防すること、続いてもし腰痛になったら悪化させないように対処することが大切です。

介護職が腰痛になりやすい動作や業務とは?

まず、介護職が腰痛になりやすい動作・業務について確認していきましょう。

対象・動作別腰痛発生割合

【1】人………………… 腰痛発生時に人を取り扱う、人が介在する動作
【2】荷(下→上)……持ち上げ、積み込み、引き上げ等
【3】荷(上→下)……荷降ろし等
【4】荷(前後左右)… 運搬、移動、押し引き、陳列、ずらす等
【5】荷(不動)………物を持って振り返る、背負う動作等
【6】荷(制動)………荷を支える、荷を受け止める動作等
【7】その他…………… 屈む、中腰になる、長時間屈む姿勢から立ち上がる等

上図を見てみると「人」を対象とした動作が、腰痛となる要因の8割以上を占めています。これは、介護現場における仕事内容を反映していると言えます。腰痛が起きやすいのは、対要介護者の業務がほとんどだと言えるでしょう。

腰痛が起きやすい介護の業務

そこで次に、具体的にどんな介護の業務が腰痛になりやすいのか見てみましょう。

移乗介助、移動介助、食事介助、体位変換、清拭・整容・更衣介助、おむつ交換、トイレ介助、入浴介助、送迎業務、生活援助

以上が腰痛の要因となりやすい介護の業務です。
これらの業務は「長時間に及ぶ同じ姿勢」「前屈・中腰姿勢など無理のある体勢」「要介護者の体重」などの要因から、どうしても腰に負担がかかってしまいがちです。

介護職の効果的な腰痛予防対策とは?

介護職の業務は、腰に負担がかかりやすいことがわかりました。しかしそうは言っても介護施設に必須の業務なので、やらないわけには行きません。
できるだけ腰への負担を減らし、腰痛を予防するにはどうしたらいいのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

福祉機器や補助具等を利用

腰痛の発症を予防する意味から、利用者の抱きかかえは一人で行わないことが原則です。
そこで、利用者の抱きかかえなどに伴う腰部負担を軽減するために、職場に福祉機器や補助具等を導入して活用します。腰痛予防に有効な福祉機器や補助具としては、リフト、吊り具(スリング)シート、スタンディングマシーン、持ち手付き補助ベルト、スライディングボード、スライディングシートなどがあります。

姿勢に対する注意・心がけ

介護労働では先程から述べているように、前かがみ・中腰での作業や腰のひねりを長く保つ作業が頻繁に出現します。こうした作業による腰部負担を軽減するために「適宜小休止・休息を取る、他の作業と組み合わせる」ことにより「同一姿勢を長時間続けないようにさせること」を対策の基本として考えます。
また、立ったままで利用者を抱え、体の前方で保持する場面では、「できるだけ身体の近くで支え、腰の高さより上に持ち上げない」「背筋を伸ばしたり、身体を後ろに反らしたりしない」ようにして、腰部の負担を軽減させる事が有効です。

腰痛予防エクササイズ

腰痛予防には、簡単な運動も有効です。スポーツや医療の現場でも実践されている「ストレッチング」を行いましょう。ストレッチングとは、日本での通称「ストレッチ」です。
腰痛は、腰部やその周囲の筋肉が緊張することによって引き起こされます。これを予防するためには、腰部や背中、脚の筋肉の状態を良好に保つことが大切です。具体的には、筋肉の柔軟性を保つこと、筋肉の血流量を増やすこと、気持ちをリラックスさせ筋緊張を低下させることが必要となります。これらを向上させる方法として、ストレッチングは非常に効果的です。
身体を動かすことにより、腰や背中、脚の筋肉をケアすることで、筋肉の強化や柔軟性を向上させ、腰痛を予防することに繋がります。休憩時間などに気分転換として定期的に、一定のポーズでゆっくりとからだを伸ばし続けるストレッチングを行うのが良いでしょう。

介護職が腰痛になってしまったらどうすればいい?

前述した対策を行っても、介護職員が腰痛になってしまう場合もありえます。その際は、どうしたらいいのでしょうか?

腰痛への対応

腰痛が「特異的腰痛(特定の原因がある腰痛)」か「非特異的腰痛(原因不明の腰痛)」なのかによって対応が異なります。

特異的腰痛(特定の原因がある腰痛)の場合

医師の診察および画像の検査(X線やMRIなど)で、腰痛の原因が特定できるものを特異的腰痛と言います。
坐骨神経痛のような足のしびれを伴う場合には、腰椎椎間板ヘルニアまたは腰部脊柱管狭窄症が疑われ、医療機関で精密検査を行う必要があります。
特に、足の痛みやしびれに加えて「足の力が入りづらい」「安静にしていても痛い」などの症状がある場合は重篤な疾患である可能性があります。まずは速やかに医療機関を受診しましょう。

非特異的腰痛(原因不明の腰痛)の場合

医療基幹を受診し、特定の原因が見つけられない腰痛は非特異的腰痛と呼ばれます。非特異的腰痛は、腰痛全体の約85~90%を占めるとされています。重量物を取り扱う介護職では、「ぎっくり腰」などの非特異的腰痛が発生しやすい傾向にあります。
動かすことが困難な場合には安静が必要です。横向きか上向きで膝を曲げ、エビのような姿勢で横になりましょう。 動けない状態を脱したら、回復を促すためにも痛み止めを利用するなどして、普段の活動を維持するように努めましょう。

ぎっくり腰は、一度発症するとその後長期にわたり再発と軽快をくり返しやすいことが特徴です。「腰が痛い」「腰がだるい」というような腰痛を疑う症状があったら、悪化する前に事業者に伝えましょう。
腰痛の程度や仕事の内容、職場でのストレス、同僚からのサポート状態、健康管理の状態などについて、労働者、事業者、産業医(医師)などを交えて十分に相談して「腰痛どのようにして休む(あるいは働く)ことが適切か」決めていくことが必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。腰痛は介護職員にとって頻度が高いトラブルですが、なるべく腰に負担がかからないように対策を行うことで、発症・悪化を防ぐことができます。
腰に負担がかかる業務を行う際はやり方に注意し、一人でやらないように福祉機器や補助具等を使用し、負担を分散する人員体制を取るのがベストでしょう。そのためには、施設の人手に余裕がなければいけません。人手不足では、一つ一つの行動に配慮する余裕がなくなってしまいますし、一人あたりの負担も重くなってしまいます。

とは言え、介護業界は人手不足で人員に余裕がないのも事実です。そこで、「人手不足によって介護職にかかる負担を軽減する」という観点で、最新の介護ロボットを導入するのはいかがでしょうか?たとえば見守りシステムの導入で巡回・体調管理に関する負担を軽減すれば、その分他の業務に対応する余裕が生まれます。
腰痛予防・対策をしっかり行うために、負担を軽減する「介護ソリューション」の分野で介護職をサポートするのもいいかもしれません。

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出典・参考資料