介護問題

知っておきたい介護問題のいま、介護業界にとりまく5つの現状

今、介護業界をとりまく状況は高齢化社会をしのぐ超超高齢化社会の到来に向け、たくさんの問題をはらんでいます。医療費問題や老人の孤独死など問題をあげていけばきりがありません。そこで、ここでは現状大きな問題とされる5つの問題に絞り、それらの現状をお話ししたいと思います。

【介護問題その1】超超高齢者社会の到来

高齢者社会とは、総人口に占める65歳以上の老人の割合が増大していく問題です。高齢者が現役世代より増えていくことで、今まで問題なく回っていた年金や医療保険などのシステムが破綻し個人の負担が増えていきます。実際、今の人口はどのような比率なのか今後どのように変わっていくのかを詳しくみてみましょう。

増える高齢者。現状人口と今後の推計

現状の高齢者がまずどのくらいいるのか、総務省統計局の出した資料に2017年の人口数値が出ています。そこでは65歳以上人口は3521万5000人、前年度と比べ54万4000人程※1増えているそうです。そして今後の推計では2040年に高齢者社会のピークを向かえ3920万人※2になります。
数値だけ見ると現状より高齢者人口が少々増えた程度に見えるかもしれません。しかし高齢者社会の問題は高齢者が増えるだけでなく少子化問題と重なって悪化するものなのです。

少子化によって人口総数が減っている

2016年の出生数は約97万7000人※3程で2017年の推計はさらに下がると予想されています。2000年の頃の出生数が約119万人だったことに比べればどんどんと新生児が減っていることが分かります。
このように子供は増えない状況が続いており、人口総数が減っている実態が今の現状です。

結論:2040年では高齢者の割合が35%

高齢化と少子化の問題をみて人口が減っていく中、高齢者の割合が増えていく実態を述べました。2017年は高齢者の割合が約28%、そして2040年では35%もの割合を占めます。2000年の頃は17%程だったものが急激に割合を増やしているのがよく分かります。
次は高齢者の割合が増えてしまったことでおこっている問題を記述します。

【介護問題その2】増加し続ける医療費問題

高齢者が増えていくことで金額が膨らんでいくのが年金、給付金、そして医療費です。どの項目も現在問題視されていますが、今回話題に取り上げるのは自己負担額を引き上げた医療費問題です。

国民医療費の約60%を高齢者に使用

現在、70歳以上の高齢者は2割、75歳以上では1割(現役並の所得者に対しては3割)の自己負担をしています。平成26年から70歳~74歳までの負担額を段階的に1割負担から2割負担にし、今年全て2割負担になりました。しかし高齢者にかかる医療費は多いままです。
ここで高齢者に使用する国民医療費の割合を見てみましょう。2015年の国民医療費は全体で42兆3644億円、そのうち高齢者(65歳以上)に使用している費用は25兆1276億円、割合では約60%程※4を占めています。

結論:医療費の増加が自己負担額の引き上げに

生産年齢人口の減少と高齢者の増加で財源確保が難しくなっている今、財務省から75歳以上の自己負担も2割に増やすよう提案が出されています。まだ提案時点ではありますが、もし2割負担になった時所得が低い高齢者が病院に気軽に行けなくなり十分な医療を受けられない可能性があると懸念されています。

【介護問題その3】老老介護

老老介護とは老人が老人を介護することをいいます。よくある例としては、老夫婦がそれぞれを介護し合う形がそれに当たります。老老介護の場合認認介護(認知症同士の介護)の危険性もあるので問題視されているのが現状です。しかし昨今では介護人材の不足により高齢者にも介護現場で活躍してもらうよう働きかける動きがあります。まず現状をみてみましょう

介護職員の12%、訪問介護員の31%が60歳以上

職員の年齢構成

介護に携わる職員の年齢構成を調査した結果※5です。施設等で働く介護職員は30代の24%が一番多く次に40代、20代と続きます。60歳以上は12%と低い数値ではありますが60歳を超えても働いている方がいることがわかります。さらに訪問介護員では60歳以上が一番多く働いているという結果がでています。【2013年調査】

結論:介護施設で高齢者職員が今後増えていく可能性も

2015年に出された65歳以上の雇用者の年次推移の資料を見ると、2010年では68.8%だったのに比べ2015年では74.2%※6まで増えています。このように雇用者にも高齢化の波は来ており、介護職員も今後さらに高齢化が進む可能性がみえます。

【介護問題その4】高齢者の虐待

年々相談件数が増えているという問題がある高齢者への虐待。家族や親族だけでなく養介護施設で働く職員からの虐待も問題視されています。虐待内容としては、身体的虐待が一番多く、次に心理的虐待と続いています。他にも経済的虐待、介護等の放棄、性的虐待などが上がります。まずはどのくらい相談件数が来ているのかみてみましょう。

2016年の養護者による虐待判断件数は16,384件

国が毎年調査結果として出している”「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果”から虐待件数の増加を見てみます。

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

年々増加傾向にあることがよくわかります。最新の2016年では養介護施設従事者等による虐待判断件数が452件、相談・通報件数は1,723件です。養護者によるものは虐待判断件数が16,384件、相談・通報件数は27,940件と結果※7が出ています。

結論:介護施設による虐待は職員不足が原因かも?

どうして虐待が起こるのか、特に養介護施設従事者等では2015年と比べ2016年では約11%も虐待判断件数が増えています。
養介護施設従事者等の虐待発生要因は、”教育・知識・介護技術等に関する問題”と答えた職員が多くいました。他にも”職員のストレスや感情コントロールの問題”※8とし、このような自体になってしまうのは、”人手不足による教育の余裕がない”、”ストレスが溜まってしまう状況”なのが原因ではないかと考えます。

【介護問題その5】介護難民

厚生労働省が2017年の特別養護老人ホームの入所申込者の状況※9をまとめました。前回の調査から比べ入所申込者が減少し、以前に比べ待機状況も改善されている模様です。この資料だけ見ると介護難民問題は解決されているかのように見えますが、今回特養の申込者が減ったのは法改正により要介護3~5の方しか原則入所できなくなったため減ったに過ぎません。
まずは受け入れるための施設が増えなくてはいけないという問題があるのですが、老人福祉・介護事業の倒産が相次いているそうです。詳しくみてみましょう。

老人福祉・介護事業の倒産状況が過去最多

倒産件数

まず上記倒産推移を見てください。2015年時では64件だった倒産数が2016年には107件、そして2017年には115件の介護事業者が倒産しました。
要因としては競争の激化や人手不足、2015年度の介護報酬改定によるものが影響したのではないかと言われています。

結論:人手不足解消で難民も解消

2018年度の介護報酬はプラス改定となり、さらに国として介護人材確保対策※10をおこなうことを公表しました。主な対策は介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受入環境整備を取り組むことです。改善がおこなわれることで人材不足に困窮している施設も運営できるようになり、今後増えていく高齢者の受け入れ先の確保につながればと思います。

まとめ

介護問題はすぐにはなくならない
問題が山積している介護問題をスグに解決する特効薬はありません。色々な要因が重なって深刻な問題になっているため官民が一体となってさまざまな方法を実行していくしかないでしょう。
ただし、最近になって人の力だけに頼るのではなく、少人数でも多くの高齢者を介護できる新しい技術に注目が集まっています。それはAIやロボット技術です。これらの技術の活用を加速させサポートしていくことで、介護問題といわれる難題を解く手がかりになるかもしれません。

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出典情報

※1 総務省統計局:人口推計(平成29年(2017年)12月確定値,平成30年(2018年)5月概算値) (2018年5月21日公表)
※2 内閣府:少子化をめぐる現状
※3 厚生労働省:平成29年(2017)人口動態統計の年間推計
※4 厚生労働省:平成27年度 国民医療費の概況
※5 厚生労働省:介護人材の確保について
※6 厚生労働省:平成28年版 厚生労働白書
※7 厚生労働省:平成28年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
※8 厚生労働省:平成26年度の高齢者虐待の対応状況等
※9 厚生労働省:特別養護老人ホームの入所申込者の状況
※10 厚生労働省:第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について