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高齢者のバイタルサイン留意点【正常値・異常値】とは?

介護施設に入居している高齢者を見守る上で欠かせないのが、バイタルサインです。
介護施設で働く方ならご存知かと思いますが、入居している高齢者の健康維持にとってとても重要な情報です。
今回は一般の方にも分かりやすいように、バイタルサインの兆候から分かる危険性や、毎日測る重要性、最新のセンサーを利用した自動計測についてなど、高齢者のバイタルサインについてお話しします。

高齢者の不調を早期発見!バイタルサインの重要性

そもそも、バイタルサインとはどんなサイン?

バイタルサイン(vital signs)を日本語訳すると、『バイタル=生体』『サイン=兆候』です。その名の通り、生体の兆候を示す言葉になります。
バイタルサインは、人が生命を維持する上で重要な動きをしている部分…つまり脈拍や呼吸などで確認します。これらの数値を見れば、高齢者の健康状態が分かります。
バイタルサインは毎日最低でも1回計測し、健康状態を記録する必要があります。それは、日々の変化を捉えることが大事だからです。定期的に計測することにより、普段とは違う異常値が分かりやすくなります。症状に合わせて薬の処方や医師に相談するなど、対処をおこなう指標となります。

高齢者のバイタルサイン測定の留意点【計測の基本4つ】

高齢者のバイタルサインを計測する際、基本的な部分は『体温』『脈拍』『呼吸』『血圧』の4つの項目です。では、具体的にどのようなことに留意し、どうやって測定をするのかを見ていきましょう。

【1】高齢者のバイタルサイン~体温測定の留意点

1つ目の『体温』について見ていきましょう。まず知っておくべきなのは、高齢者(老人)と若年者(成人)では、平均体温に少し違いがあるということです。若年者(成人)の平均体温は36.89℃、高齢者(老人)の平均は36.66℃となっており、若年者より高齢者の方が少し低いことが分かります。※1
また体温は時間帯によっても変動があり、日中は高く夜間は低くなる傾向があります。このことから、可能な限り毎日同じ時間に体温を計測するのが望ましいと考えます。更に、ご飯や運動などの体温が上がる行動の後は検温を避けたり、できれば起床した直後に測るのが理想になります。

高齢者と若年者、男女の体温比較表 ※1 出典:老人腋窩温の統計値、日老医師12, 172-177, 1975
体温の正常値・異常値は何度くらい?

正常値:36~37℃前後
異常値:35℃以下、38℃以上

一般的に37℃前後までは正常の値とされ、38℃を超える場合は医師へ相談するか薬の処方をおこなう必要性があります。また、度数に関わらず普段平熱が低い人が上がった場合も注意が必要です。
更に、平熱より逆に低い状態にも気を付ける必要があります。特に高齢者は体温に対して鈍感になっていることがあるので、低体温症の兆候に気づかない場合もあります。そのため、やはり目視の健康状態だけではなく検温による数値確認が重要となります。

▼合わせてチェック!
また、夏場の体温上昇で気を付けたいのが「熱中症」です。熱中症でよく見られる症状の一つに、体温上昇(高体温)があります。平成29年の総務省データによると、「年代別の熱中症による救急搬送状況」では、高齢者が全体の半数近くを占めています。
高齢者は熱中症になりやすいことに加えて、「熱中症に気づきにくい」「熱中症の症状が重篤化しやすい」という危険性もあるため、迅速な対応が必要です。高齢者の熱中症対策については下記URLにまとめてありますので、ぜひご覧ください。
連日の猛暑、高齢者の熱中症対策は大丈夫?(介護施設編)
暑い日が続く中、気をつけなくてはいけないのが熱中症。特に7月、8月は熱中症のピークと言われ毎年救急搬送される人が絶えずいるのが現状です。特に高齢者の方が多く、介護施設としても熱中症の対策をしなければなりません。ここではそんな熱中症について述べます。

【2】高齢者のバイタルサイン~脈拍測定の留意点

続いて、2つ目の『脈拍』についてご説明します。高齢者の脈拍は、基本的に60~70回/分と言われています。脈拍も、入居者の状態によって変化してしまうバイタルサインです。運動直後や入浴直後、排泄後はできるだけ避けたほうがいいでしょう。また緊張状態も良くないので、、安定している時に可能な限りリラックスした状態で計測する必要があります。

脈拍の正常値・異常値は、一分間に何回くらい?

正常値:60~70回/分
異常値:60回/分以下、100回/分以上

脈拍が60回/以下のものを徐脈と言い、100回/分以上のものを頻脈と言います。どちらも不整脈と呼ばれており、脈のリズムが一定ではなくなる状態も不整脈に該当します。
リラックス時に不整脈が続くような場合は、心房頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群、洞不全症候群、房室ブロック、心房性期外収縮…など、心臓に関わる疾患を発症している可能性があるので、すぐに医師へ相談してください。


【3】高齢者のバイタルサイン~呼吸測定の留意点

3つ目の『呼吸』ですが、異常値の見方にポイントがあります。高齢者の呼吸を測定する場合は、普段の呼吸数との差を意識する必要があります。その理由としては、高齢になると呼吸数の幅が広くなる傾向があるからです。成人では12~18回/分が正常なのと比較すると、80歳以上になると10~30回/分が正常値となります。このことから、普段の呼吸数をしっかり把握し、自然に近い状態で入居者の呼吸を測定する必要があるのです。

呼吸の正常値・異常値は、一分間に何回くらい?

【正常値】※1
12~28回

【異常値】※2
頻呼吸 – 呼吸数が多い24回/分以上
徐呼吸 – 呼吸数が少ない12回/分以下
無呼吸 – 呼吸が止まる(10秒以上)
クスマウル大呼吸 – 異常に深大な呼吸が連続
過呼吸 – 呼吸数、1回の深さ(換気量)ともに増加
低呼吸 – 呼吸数、1回の深さ(換気量)ともに減少
チェーン・ストークス呼吸 – 無呼吸、または低換気と過換気が周期的

※1 65歳以上の高齢者
※2 一般的な成人数値

呼吸の異常を測る場合、呼吸の速さや1回の呼吸の深さ、リズムなどが留意点になります。高齢者の命を奪う肺炎になった時にも呼吸の異常は起こるので、普段の呼吸との違いを発見したら迅速に医師へ相談することが大事です。

呼吸の種類と波形の図

【4】高齢者のバイタルサイン~血圧測定の留意点

最後は『血圧』についてご説明します。高齢者が気をつけなくてはならない疾患の一つが、高血圧です。高血圧は大きな病気を引き起こすサイレントキラーと呼ばれ、それでいてなかなか自覚症状が持てないのが特徴です。放置しておくと、合併症として「狭心症」「心筋梗塞」「大動脈瘤」「脳梗塞」「くも膜下出血」などの命に関わる大病を引き起こす可能性があります。
計測については、体温同様に「決まった時間」の「何か行動を起こす前」に測るのがベストです。条件を同じにすることで、数値の変動をしっかりと捉えることができます。

血圧の正常値・異常値はいくつ?

正常値:140/90mmHg未満
異常値:140/90mmHg以上

※診察室で測定した場合の血圧値

血圧には段階があり、正常域血圧・高血圧ともに三段階に分かれています。具体的には下記の表のように分かれており、正常高値血圧になった時点で注意が必要になります。

NPO法人日本高血圧学 血圧値と高血圧判別についての図
高齢者の「重篤な状態」を示す、バイタルサイン参考値
体温に関しては比較的緊急性が分かりやすいと思いますが、他の3つについては正直なところ重篤度合いが分かりにくかったりします。そういった場合は下記の数値を参考に、どれかひとつでも該当数値が出ていた場合はすぐに救急搬送するのが最適です。
・脈拍:120回/分以上又は50回/分未満
・呼吸:10回/分未満又は30回/分以上、呼吸音の左右差、異常呼吸
・血圧:収縮期血圧90mmHg未満又は収縮期血圧200mmHg以上
総務省消防庁救急企画室

実は色々ある?計測以外の高齢者のバイタルサインの見方

今まで紹介した4つは、実際に数値を計測して入居者の健康状態を確認するものでした。しかし実はバイタルサインには目視による確認の方法もあり、入居者の日々の状態から不調に気づくこともできます。ここでは、「目で見て判断するバイタルサイン」をご紹介します。

【1】目視でできる高齢者のバイタルサインチェック~歩行速度

  • 歩行のスピード
  • 歩幅の大きさ
  • 足の上がる高さ
  • 立っていられる長さ

高齢者の身体機能を確認するに当たって、一番良い指標となるのが歩行速度になります。歩行速度は、筋力、立位バランス能、柔軟性、全身協調性を総合的に見ることができます。さらに日々の生活で確認しやすいこともあり、介護スタッフの方も、業務の合間に少し気にして見る形でも対応することができます。
歩行速度は65歳以降にゆっくりと低下し、女性では75歳、男性は80歳以降に日常生活に不自由が生じ始めます。
次期国民健康づくり運動に関する委員提出資料

【2】目視でできる高齢者のバイタルサインチェック~皮膚の状態

  • 皮膚、唇のかさつき
  • 口内の乾燥
  • 肌の弾力性

皮膚や唇の乾燥は、脱水症状のサインの可能性があります。高齢者は、失禁などに対する恐怖から、夜間水分を取らないようにしたり、喉の渇きに鈍感になってしまったりと、知らず知らずのうちに脱水症状に陥ってしまうことがあります。特に夏場注意しなくてはならないのが、肌や口の乾燥になります。普段より肌や唇がカサついたり、口の中が乾燥しているようでしたら注意してください。肌の弾力等を確認するのも手です。

高齢者介護施設にオススメ!通常のバイタルチェックにプラスすることで、異常値をすぐに知らせる自動見守り

介護スタッフの日々忙しい業務の中、一日に一回バイタルサインの計測を行う作業だけでも負担があると思います。入居高齢者の体調に合わせてチェック回数を増やす対応は大事なことですが、職員はもとより入居者にも負担をかけてしまう可能性もあります。また、呼吸と脈拍は突然異常値が出ることもあり、そのまま入居者の命に関わってきます。できることなら、いつでも入居者の状態を把握できれば安心です。
そこでオススメしたいのが、自動でバイタルサインの測定が可能なセンサーを利用した「自動見守り」です。センサーによるバイタルチェックの利点は、自動で計測してくれることに加えてナースコールとの連携で異常値があった際にはすぐ介護スタッフのハンディナース(PHS)へ知らせてくれる点が挙げられます。 ここでは、そんな便利なバイタルセンサーを活用した「自動見守り」についてご紹介します。

寝ているだけで呼吸・心拍・体動をチェック

自動見守りでは、ベッドに設置するバイタルセンサーが寝ている入居者の動きや肺、心臓の動きを確認することができます。これにより、入居者の呼吸や心拍の異常がないか、睡眠はしっかり取れているのか、ベッドの中にいるのかなど分かります。
またベッドに接続するセンサーシステムの中には、体重を自動で計測できる種類の製品もあり、日々の体重変化のデータを集めることで健康維持のプラン立てに活用することも可能です。

非接触バイタルセンサーによる脈・呼吸のチェック

自動見守りで使われている”非接触バイタルセンサー”は、マイクロ波を使ったドップラーセンサーを利用しており、入居者がベッドに寝ていなくても脈や呼吸を測ることができます。
利点としては、ベッド以外にもソファなど入居者がよく過ごす場所での計測が可能な点です。他にも経年劣化がしづらい点など、多くのメリットがございます。

バイタルセンサーを活用した「自動見守り」について詳しく知りたい方は、是非下記ページで詳細をご確認下さい。弊社で取り扱っているバイタルセンサーについて、詳しくご紹介しています。

介護職員の負担を軽減!自動で高齢者のバイタルサインをチェック
夜間の巡回、入居者の状態を定期的に確認する作業は職員にとって負担を要します。そこでバイタルを自動で取得し表示させるナースコール『Yuiコール』をご紹介。高齢者のバイタル情報やベッド上での動きを把握、緊急時は職員へ通報します。

まとめ

高齢者のバイタルサイン「大事なのは継続して数値を測ること」
高齢者のバイタルサインのチェックで一番大事なことは、毎日計測してデータを集めることにあります。普段の状態を数値化させることで、病気の前兆に気づける確率が上がります。早期に病気の前兆が分かれば、食事や運動の改善、医師への相談、薬の処方など…入居者に対して迅速な対処が行えます。
このようにバイタルサインは、入居者の安定した生活のために重要なサインとして活用することができます。