介護施設とインターネット

高齢者のインターネット利用について~介護施設にはWi-Fiを!

実は今、高齢者のインターネット利用が増えていることをご存じですか?
高齢者のインターネット利用が増えている昨今、気になるのは「高齢者はどのようにインターネットを使っているか?」「その目的は何なのか?」ということです。
特に介護事業者では、利用者のための設備としてインターネット環境を導入すべきなのか、Wi-Fiの設営をすべきなのか…などのお悩みもあるかと思います。
そこで今回は、高齢者のインターネット利用事情についてから高齢者のためのネット環境の構築にどう対応していくべきかについてまで、お話していきたいと思います。

高齢者のインターネット理由が増えた理由とは?

そもそも、高齢者のインターネット利用が増えている理由はなんでしょうか?そこには、二つの理由があります。
一つ目の理由は、インターネットに慣れている世代の高齢化です。一般的にインターネットが普及した2000年代始めに当時中年世代だった人達は、会社や自宅でインターネットを利用し始めたのでインターネットに慣れています。この世代の人達が、現在高齢者になったことが理由の一つとして挙げられます。
二つ目の理由は、スマートフォンや携帯電話の普及です。子が高齢の親に安否確認と通話の手段として、スマートホン端末を渡す場合があります。スマホとネットの親和性は高いので、必然的に高齢者も日常的にインターネットと触れ合う機会が増えました。

60~69歳の世代は、インターネット利用者が7割もいる?!

平成29年度年齢別インターネット利用状況※1を見てみると、60~69歳の利用率が73.9%と7割上回っていることがわかります。インターネットの利用が増えた高齢世代にどのような推移があったのか、またどのような利用をしているのか詳しく見ていきましょう。

60歳以上のインターネット利用者は、年々増加傾向に

高齢者インターネット利用率の変化詳細

平成12年(2000年)※2の、60~64歳の利用率は22.8%でした。65歳以上(65~74歳)の利用率になると12%程になり、ほとんどの高齢者がインターネットを使用していなかったのが分かります。
平成20年(2008年)※3では、60~64歳の利用率は63%を超えました。しかし平成12年と比べて利用率が上がったとはいえ、65歳以上(65~69歳)の高齢者については37%と、まだ低い数値のままです。
その後平成29年(2017年)になり、60~69歳の利用率が73.9%とついに7割を超えた状態になりました。このようにして利用率が年々上がっていき、ここ数年で7割超えを達成したという事が分かります。

高齢者がインターネットの閲覧に使用する端末は?

さて、高齢者は何を使ってインターネットを閲覧しているのでしょう。下記の資料※1を見てみると、閲覧にパソコンを利用している人が多い事が分かります。次点で利用率が高いのが、スマートフォンです。
しかし5年前の資料※5を見ると、60歳以上のスマートフォン利用率は3.7%と低く、平成29年度の資料と見比べるとスマートフォンの普及の速さが分かります。この結果を見る限り、数年来のうちに高齢者のスマートフォン利用率が、パソコンの利用率を抜かすことも考えられます。

年齢階層別インターネット利用機器の状況

高齢者だって、SNSを使いたい!

インターネット利用目的

次に、高齢者がどのような目的・用途でインターネットを利用しているのか見ていきましょう。
上図※1を見ると、最も利用されている項目は「電子メールの送受信」です。次に利用されているのが、地図や交通情報の提供サービス・天気予報・ニュースなどで、情報取得を目的とした内容の利用が続きます。
ここで注目したいのが、「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」聞き慣れた言葉で言えば「SNS」の利用についてです。平成26年~28年の利用状況資料※4を見ると、60~69歳のSNS利用率が増加傾向にあることがわかります。具体的には平成26年が19%、平成27年が22.5%、平成28年が22.6%と、徐々に上昇しています。平成23年の段階では、60歳以上の利用率は1.8%※5だった事から考えると、高齢者にもSNSが普及した現状が見て取れますね。
SNSというと若い世代の人たちが利用するイメージがありますが、高齢者の間でも使う人が増えているということです。

介護施設の価値としてインターネット環境(Wi-Fi)を整えるメリット

高齢者のインターネット利用が増えている傾向が見えてきましたが、では介護施設としてはどのような対応をしていくのが良いのでしょうか?
答えとしては、介護施設内のLAN環境・Wi-Fi環境を整えることをおススメします。

高齢者は、実はLINEの利用率も高い!

LINE

高齢者のLINEの利用率が高くなっているという調査結果※6があります。2013年11%程だった利用率が、2017年では41%に。チャットや無料通話ができるLINEは、身近な人との連絡によく使われているのかもしれません。
前述した通り、無料通話が売りのひとつにあるLINEですが、通話を行なうには「パケット通信料」がかかります。パケット通信は、通信量の制限がある場合が多いです。上限を超えると、「ネットが使用できない、または追加料金の支払いをしなくてはいけない」状態になります。そんな時、施設にあるWi-Fiを利用できれば、パケット通信量を気にすることなくLINEを利用できるようになります。
介護施設のWi-Fi環境を整えることで、入居者が安心して家族や友人と連絡が取れる環境を提供することができます。

Facebookは、高齢者の生きがいにも貢献?

Facebook

高齢者は、SNSの中でも特にFacebookの利用が多いです。匿名性が高いSNSの中でも、実名で勤務先や出身校などをしっかり登録できるFacebookは安心して使用できるからかもしれません。そんなFacebookを閲覧・投稿するのにも、当たり前ですが通信量がかかります。
先程話した通り、多く利用すればするほど使えるパケット領域を圧迫するので、ネットの使用制限に繋がります。
高齢者にとって外部とのつながりは、生きがいとして重要であり、認知症の予防にも役立ちます。そんな外部との接触手段を妨げることがないよう、インターネット環境を整えて入居者がネットを利用しやすくしましょう。

スタッフの業務効率UPにも役立てる

さて、これまで介護施設内のネット環境を整えることによる「入居者に対しての利点」を申し上げてきましたが、Wi-Fi環境の整備はスタッフの業務効率UPにも有効です。
それは、介護記録に関する業務です。昨今ではペーパーレス化が進み、データで記録を入力・打ち込みするのが主流となってきました。しかし紙ベースで記録した内容を、パソコンでひとつひとつ転記入力していくのでは、作業時間が膨大にかかってしまいます。
Wi-Fi環境を整えることで、入居者の様子や状態・行動についてその場ですぐにタブレットから打ち込めるようになります。タブレットで打ち込まれた記録はネットワークを通じてデータベースに自動で保存され、データとして蓄積していくことができます。

介護施設にインターネット環境(Wi-Fi)を整備する時の注意

インターネットを各居室で自由に使えるようにするメリットについて話しましたが、環境を整備する際に気をつけなくてはいけない点もあります。ここでは、インターネット環境(Wi-Fi)を整備する時の注意点についてお話します。

注意点1:居室用と事務所用のネットワークは分ける

各居室と事務所で使用するインターネットを同じネットワーク領域で設定してしまうと、事務所内に保存されている個人情報や機密が不正閲覧される可能性が高まります。そのため、VLAN(Virtual Local Area Network)を使用してネットワークを分ける設定をおこないましょう。
この機器を挟むことで、入居者側のネットワークから事務所内のネットワークへ入れないように対策できます。

VLANHUBシステム図

VLAN以外にも、完全に回線自体を分けることも有効です。この場合、例えば動画閲覧をする入居者が多い=ネットワークの帯域を多く取るコンテンツを使われるケースでも、事務所内のネットワークには影響を与えないことが利点です。しかし先程説明したVLANの方法に比べると、イニシャル・ランニング工事共に多くのコストがかかってしまうという難点もあります。

別回線システム図

注意点2:ウイルス対策も万全にする

インターネットをやる上で気をつけなくてはいけないのが、ウイルス感染です。これについては「インターネットを利用することで感じる不安の有無」に対し、60代・70代の約70%以上※1の方も不安に思っています。
「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」や「乗っ取り・詐欺」などを不安に感じており、このような不安を解消するためにも施設内のセキュリティを向上させる必要があります。
そこでオススメなのが、UTMの設置です。UTMはルーターの下部に設置することで、インターネットを監視する役割があり機器です。1台接続すれば、下部に設置したパソコンやスマートフォンのウイルス対策が可能なことが利点です。UTMに加えて通常のウイルスソフトも導入することで二重のセキュリティガードとなり、より安全なインターネット環境を提供することができます。

UTMシステム図
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まとめ

Wi-Fiは、介護施設の顧客満足度を向上する!

入居希望者が介護施設検索をする際に、「インターネットの利用が可能かどうか」をチェックする欄があるサイトがあります。入居の際に施設を選ぶ基準の一つとして、「インターネットの利用の可否」があるということが分かりますね。
近年では、介護施設に限らず無料のWi-Fiや有線LANサービスを提供する場所は多くあります。インターネットを使える環境があるかどうかが、様々なサービスで価値向上に繋がってくるということですね。
入居者にとって居心地のいい施設にするために、これを機に介護施設のインターネット環境・Wi-Fi環境を整えてみるのはいかがでしょうか。


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出典情報

※1 総務省:平成29年通信利用動向調査の結果
※2 総務省:平成13年「通信利用動向調査」の結果
※3 総務省:平成20年「通信利用動向調査」
※4 総務省:平成28年「通信利用動向調査の結果」
※5 総務省:平成24年「通信利用動向調査の結果」
※6 ソニー生命調べ:シニアの生活意識調査2017