パーキンソン病とは
英名:Parkinson’s disease
「手が細かく震える」「歩き始めの一歩が出にくい」「以前より動作がゆっくりになった」——こうした変化の背景には、パーキンソン病が関係している場合があります。
パーキンソン病は、脳の中にある「黒質(こくしつ)」という部分の神経細胞が減少し、ドーパミンという神経伝達物質が不足することで、体の動きを調節しにくくなる病気です。
ドパミンは、脳から筋肉へ動きの指令を伝える仕組みを調整し、歩く、立ち上がる、手を動かすといった動作を滑らかにするために重要な役割を担っています。
ところが、ドパミンを作る神経細胞が減少すると、体の動きをうまく調節できなくなり、手足の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばりなどが現れます。
日本では指定難病に定められており、長期的な治療や生活支援が必要になることもあります。ただし、症状や進行の程度には個人差があり、適切な治療やリハビリテーションによって、生活の質を維持することが期待できます。

パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の症状は、大きく「運動症状」と「非運動症状」に分けられます。
運動症状だけでなく、睡眠や排便、気分など、日常生活のさまざまな面に影響することが特徴です。
- 振戦(しんせん)/手足の震え
手足などが震える症状です。特に、何もしていないときに手が震える「安静時振戦」が特徴の一つです。動作を始めると震えが目立たなくなる場合もあります。
- 動作緩慢(どうさかんまん)・無動/動作の遅れ
動きが遅くなり、動作を始めるまでに時間がかかる症状です。着替えや食事に時間がかかったり、歩き始めの一歩が出にくくなったりします。表情が乏しく見えることもあります。
- 筋強剛(きんきょうごう)/筋肉のこわばり
筋肉がこわばり、手足を曲げたり伸ばしたりしにくくなる症状です。肩こりのような違和感や、体の動かしにくさとして気づく場合もあります。
- 姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)/姿勢の不安定さ
バランスを崩したときに姿勢を立て直しにくくなる症状です。前かがみの姿勢や小刻みな歩行が見られ、進行すると転倒の危険性が高まります。
運動以外にも現れる「非運動症状」
パーキンソン病では、体の動き以外にも、次のような症状が現れることがあります。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 自律神経の症状 | 便秘、立ち眩み、排尿問題、発汗異常 |
| 睡眠の症状 | 不眠、日中の強い眠気、睡眠中に大声を出す、手足を動かす |
| 精神面の症状 | 気分の落ち込み、不安、意欲の低下、幻覚 |
| 認知機能の症状 | 注意力や判断力、記憶力の低下 |
こうした症状は、運動症状よりも先に現れる場合もあり、本人や家族がパーキンソン病と結びつけて考えにくいことがあります。症状によっては、生活の質に大きく影響するため、診察時に医師へ伝えることが大切です。
パーキンソン病の原因と発症しやすい人
パーキンソン病は、中年以降に発症することが多く、高齢になるほど発症する人の割合が高くなる傾向があります。
発症の詳しい原因は明らかになっていませんが、遺伝的な要因や環境要因、加齢などが複雑に関係していると考えられています。本人の生活習慣や特定の行動だけが原因となって発症する病気ではありません。
パーキンソン症候群との違い
「パーキンソン病」と似た言葉に「パーキンソン症候群」があります。
パーキンソン症候群とは、震えや動作の遅れ、筋肉のこわばりなど、パーキンソン病に似た症状が現れる状態を指します。
原因には、パーキンソン病のほか、薬の副作用、脳血管障害、別の神経変性疾患などがあります。
つまり、パーキンソン病はパーキンソン症候群を引き起こす原因の一つです。症状が似ていても原因や治療法が異なることがあるため、専門医による診断が重要です。
パーキンソン病の診断と治療
パーキンソン病は、主に症状の経過や神経学的な診察をもとに診断します。現在、病気の進行そのものを確実に止める標準治療は確立されていませんが、症状を改善し、日常生活を支えるための治療法があります。
- 薬物療法
治療の中心となるのが薬による治療です。代表的な薬の「レボドパ」は、脳内でドパミンに変わり、不足したドパミンの働きを補います。そのほか、ドパミンの働きを助ける薬なども使われます。 - リハビリテーション
歩行やバランス、姿勢、筋力などを維持するために、運動療法や理学療法などを行います。必要に応じて、着替えや食事などの生活動作を練習する作業療法、発声や飲み込みを支援する言語聴覚療法なども活用します。 - 手術療法・機器を用いた治療
薬だけでは症状のコントロールが難しい場合には、脳深部刺激療法(DBS)や、持続的に薬を投与する治療などが検討されます。
これらの治療は、病気を完全に治すものではありませんが、症状を和らげ、できるだけ自分らしい生活を続けることを目指すものです。

最新情報:治療の選択肢は広がっている
2025年には、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)による、薬の効果が切れる時間帯などに起こる運動症状の変動に関する治療法のエビデンスレビューが公表されました。進行に伴う症状の変化に対して、治療法を適切に組み合わせることの重要性が示されています。
また、脳深部刺激療法(DBS)に加えて、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)など、特定の症状を和らげるための治療も医療現場で活用されています。ただし、すべての患者に適しているわけではなく、期待できる効果や対象となる症状が異なります。
新しい治療法の研究も進められていますが、病気の進行を確実に止める治療がすでに確立したわけではありません。最新の治療情報については、脳神経内科の専門医に相談することが大切です。
パーキンソン病と公的支援制度
パーキンソン病は、2026年4月時点で厚生労働省の指定難病に含まれています。
ただし、指定難病であることと、医療費助成を受けられることは同じではありません。医療費助成には、診断基準や重症度などの要件があり、一定の条件を満たす場合には、指定難病の医療費助成制度を利用できる可能性があります。利用できる支援については、住んでいる地域の保健所や難病相談支援センター、医療機関の相談窓口などで確認するとよいでしょう。
パーキンソン病は、脳内のドパミン不足によって体の動きを調節しにくくなる、進行性の神経疾患です。
手足の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばりだけでなく、便秘や睡眠障害、気分の落ち込みなど、さまざまな症状が現れることがあります。現在、病気の進行を確実に止める治療法はありませんが、薬物療法やリハビリテーション、必要に応じた手術・機器を用いた治療など、症状や生活状況に応じた選択肢があります。
早めに医療機関へ相談し、本人や家族、医療・介護の専門職が連携して支えることが、安心して生活を続けるための大切な一歩です。
出典・参考資料
- 日本神経学会「パーキンソン病|神経内科の主な病気」:症状・原因・診断・治療について
- 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」:診察ガイドライン
- 日本定位・機能神経外科学会「パーキンソン病の症状と治療法」:薬物療法・外科的治療について
- 厚生労働省「令和8年4月時点の指定難病」:指定難病の一覧と概要














