仕事と介護の両立とは?介護離職を防ぐために知っておきたい現状とサポート制度
家族の介護が必要になったとき、多くの人が直面するのが「仕事と介護をどう両立するか」という問題です。
「親の通院に付き添わなければならない」
「介護サービスの手続きやケアマネジャーとの打ち合わせがある」
「仕事中に親の体調が悪くならないか心配」
「介護のために仕事を辞めたほうがいいのだろうか……」
介護は、ある日突然始まることがあります。
そして、介護は育児とは異なり、いつ始まり、どのくらい続くのかを予測することが難しいという特徴があります。そのため、仕事を続けながら介護をする「仕事と介護の両立」は、働く世代にとって大きな課題となっています。
ここでは、仕事と介護の両立を取り巻く現状や、介護をする人が抱えやすい悩み、利用できる制度や職場のサポートについて解説します。
仕事と介護の両立が必要になる時代

厚生労働省によると、2022年の調査では、雇用労働者のうち55~59歳の12.3%、60~64歳の11.6%が介護をしていました。特に50代以降では、仕事と介護の両方を担う人が増えていることが分かります。
つまり、介護は「定年後の問題」ではありません。
仕事と介護の両立で何が大変なの?
介護と仕事の両立が難しい理由は、介護そのものだけではありません。
介護の予定が予測しにくい
介護では、毎日決まった時間に対応できるとは限りません。
病院への付き添い、急な体調変化、ケアマネジャーとの相談、介護サービスの調整など、突然対応が必要になることがあります。
仕事の予定と介護の予定が重なれば、早退や休暇取得が必要になる場合もあります。
身体的・精神的な負担が大きい
介護は長期間にわたることもあります。
仕事を終えてから親のもとへ行ったり、休日に介護をしたりする生活が続けば、身体的な疲労だけでなく精神的な負担も蓄積します。
「自分が頑張らなければ」と一人で抱え込んでしまうことも、介護する側の大きな負担につながります。
仕事への影響が心配になる
介護のために遅刻・早退・欠勤が増えると、
「職場に迷惑をかけてしまう」
「仕事を任せてもらえなくなるのでは」
「昇進やキャリアに影響するのでは」
と不安を感じる人もいます。
その結果、介護について職場に相談できず、一人で抱え込んでしまうケースもあります。
介護にかかる費用も負担になる
介護には、介護サービスの利用料だけでなく、医療費、交通費、福祉用具の費用など、さまざまな費用がかかる場合があります。
そのため、仕事を辞めて収入を減らしてしまうことは、介護をする本人だけでなく、家族全体の経済的な負担にもつながります。
厚生労働省も、介護を続けるためには経済的な基盤が重要であり、介護に直面してもすぐに退職せず、仕事と介護を両立するための制度を活用することを呼びかけています。
「介護離職」が大きな社会問題に

介護を理由に仕事を辞める「介護離職」も、重要な社会問題となっています。
介護を理由に退職してしまうと、収入が減るだけでなく、これまで築いてきたキャリアや職場とのつながりを失うことにもなります。さらに、介護が終わった後に再び仕事を探そうとしても、以前と同じ条件で働けるとは限りません。
そのため現在は、
「介護が必要になったら仕事を辞める」のではなく、「仕事を続けながら介護できる環境をつくる」という考え方が重要になっています。
仕事と介護を両立するためのサポート制度
では、実際に介護が必要になった場合、どのような制度を利用できるのでしょうか。
介護休業
介護休業は、要介護状態にある家族を介護するために取得できる休業制度です。
重要なのは、介護休業を「自分が介護をするための長期休暇」とだけ考えないことです。
厚生労働省では、介護休業を、介護サービスを利用するなどして仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間として活用することを勧めています。
介護休暇
通院の付き添いや介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなど、短時間・スポットで介護に対応したい場合には「介護休暇」を利用できます。年次有給休暇とは別の制度で、介護や世話のために利用できます。
短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤など
介護をしながら働き続けるためには、「休む」だけでなく「働き方を変える」という方法もあります。
企業には、短時間勤務やフレックスタイム、時差出勤など、介護と仕事を両立するための措置が用意されています。
例えば、
- 朝に親を病院へ送ってから出勤する
- デイサービスの送迎時間に合わせて勤務時間を変更する
- 残業を減らして介護の時間を確保する
2025年から企業の「介護離職防止」の取り組みが強化
仕事と介護の両立を支えるため、2025年4月から改正育児・介護休業法が施行されました。
介護に直面した労働者に対して、企業が介護休業や介護両立支援制度について周知し、利用意向を確認することが義務化されています。
また、介護に直面する前の段階から、制度について情報提供を行うことや、研修・相談窓口の設置など、制度を利用しやすい環境を整えることも企業に求められています。
これは、介護が始まってから慌てて対応するのではなく、
「介護が始まる前から、仕事と介護について考えておく」
という社会への変化ともいえるでしょう。
 まとめ|仕事と介護を「一人で抱えない」ために

高齢化が進む日本では、仕事をしながら家族の介護を担う人は今後も増えていくことが考えられます。
仕事と介護の両立は、決して個人だけの問題ではありません。
介護する本人、家族、職場、介護サービス、地域社会など、さまざまな立場から支えることが必要です。
そして何より大切なのは、
「介護が必要になったら仕事を辞めるしかない」
と考える前に、利用できる制度やサービスを知ることです。
介護休業や介護休暇、勤務時間の調整、介護サービスなどを上手に組み合わせることで、仕事を続けながら介護を行う選択肢があります。
介護する人が無理をしすぎず、介護される人も安心して暮らせる。
そんな「介護と仕事を両立できる環境」を社会全体でつくっていくことが、これからますます重要になっていくでしょう。
出典・参考資料
- 厚生労働省:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
- 厚生労働省:厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
- 厚生労働省:厚生労働省「法改正のポイント」
- 厚生労働省:厚生労働省「介護休業」
- 厚生労働省:日本老年医学会「用語別関連リンク集」
- 厚生労働省:厚生労働省「介護休暇」
- 総務省統計局:「令和4年就業構造基本調査 結果の要約及び概要」(PDF)
- 厚生労働省:厚生労働省「介護支援プラン策定マニュアル」(PDF)
- 厚生労働省:厚生労働省 Webマガジン「働きながら育児・介護を両立」







