サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の補助金・補助制度はいつまで?
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の開業で頭が痛いのが、設立コストと運用コストです。
開業のための建設費用はもちろんのこと、開業後も、施設を経営する上で必要な設備・サービ・人件費など、様々な場面でコストが発生します。
そんな支出をできる限り抑えるために、多くの方が気になっているのが「補助金・補助制度」ではないでしょうか。そこで今回は、サービス付き高齢者向け住宅の開業や経営にかかる費用・コスト削減に繋がる、最新版の「補助金・補助制度」についてまとめていきます。
(※2020年11月加筆修正)
目次
サービス付き高齢者向け住宅に必要なお金とは?
開設と運営にかかる費用
一般的に介護施設を一施設開設するのにかかる費用は、定員数十人の施設規模で「数億円」になると言われています。
また一般のマンションの建築費用と比較すると、その金額の差は明らかです。郊外のマンション建設の坪単価は安い場合で30~40万と言われている一方で、サービス付き高齢者向け住宅の場合の坪単価は平均50~60万とも言われ、通常のマンションと比較すると坪当たり20万も高い傾向にあります。
建築費や運営にかかるコストは入居費用に反映せざるをえず、利用者にとってもマイナスとなれば入居率にも影響しかねません。
そこでぜひ利用したいのが、今回のテーマでもある「サ高住の開業を支援する補助金や補助制度、税制優遇」です。
サービス付き高齢向け者住宅について
そもそもサ高住とは?
民間事業者により運営されるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、60歳以上の高齢者(要介護認定を受けていれば60歳未満も)対象の賃貸住宅です。一般の賃貸住宅とは異なり、高齢者・被介護者に最適な様々なサービスを受けることができます。
そのため、規模や設備・サービス・契約関係など、サ高住として必要な登録基準があります。サービス付き高齢者向け住宅の登録手続きは、都道府県・政令市・中核市の住宅部局や福祉部局、または指定された登録機関で行います。登録を行うことにより、一定の基準を満たすサービス付き高齢者向け住宅ということが明らかになります。
また、支援制度の利用できるようになります。
サ高住の目的と支援制度
サ高住は、高齢者の居住の安定を確保することを目的として、バリアフリー構造等を有し、介護・医療と連携し高齢者を支援するサービスを提供する住まいです。
そういったサ高住は超高齢化社会への備えとして、国から2025年までに100万戸まで増やすよう推進されています。令和2年10月末の段階で、登録されたサ高住は約26万(戸)というデータがありますので、約4倍に増やさなければいけないということになりますね。
サ高住供給促進をするべく、補助金・税制・融資による支援が実施されているのです。
現在募集中のサ高住向け補助金・補助制度
では、サ高住を対象とした具体的な「補助金・補助制度」を見ていきましょう。ここでは、令和2年11月段階でサ高住が対象となって募集されている「補助金・補助制度」の最新情報を載せています。
【補助金】サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の整備事業
まず最初にご紹介するのは、国土交通省による、サービス付き高齢者向け住宅整備事業を対象とした補助金の制度です。
事業の趣旨
サービス付き高齢者向け住宅整備事業は、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる住まいの確保を図るため、バリアフリー構造等の高齢者にふさわしいハードと安心できる見守りサービスを備えた「サービス付き高齢者向け住宅」や当該住宅と併設される高齢者生活支援施設(以下「サービス付き高齢者向け住宅等」という。)の整備に係る事業を公募し、予算の範囲内において、当該整備に要する費用の一部を補助金によって補助するというものです。
事業内容と要件
- サービス付き高齢者向け住宅として登録された住宅であること
- サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録・運営するものであること
- 入居者の家賃の額が、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないように定められるものであること
- 事業に要する資金の調達が確実であること
- 入居者からの家賃等の徴収方法が、前払いによるものに限定されていないものであること
- 地元市区町村に意見聴取を行い、地元市区町村のまちづくりに支障を及ぼさないと認められるものであること
- 改修を含む事業の場合は、指定の全ての要件を満たすものであること
- サービス付き高齢者向け住宅の入居者が、任意の事業者による介護サービスを選択して利用できること
- 運営事業者又は提携事業者が提供する介護サービスの内容を、情報提供システムにて公開し、適宜情報の更新を行うこと
- サービス付き高齢者向け住宅の運営事業者が遵守すべき事項として、指定された三点を遵守する旨を宣誓すること
補助率・補助金額について
補助金は、これから開業する新築の施設だけでなく改修の場合も対象となります。
新築事業の場合、新築工事費に係る一部(補助率:1/10以内)を補助申請できます。改修事業の場合は、既存建物の整備改修費用に係る一部(補助率:1/3以内)を補助申請できます。
補助金額については上限も設定されており、新築事業の場合は住宅種別・条件により異なりますが「夫婦型サービス付き高齢者向け住宅」では一戸あたり上限135万円です。改修事業の場合も同様に住宅種別・条件により異なりますが、「既存ストック型サービス付き高齢者向け住宅」では一戸あたり上限180万円となっています。
また「高齢者生活支援施設」の場合、新築・改修どちらも一施設あたり補助金の上限は1,000万円となっています。
補足:サ高住の補助金は国土交通省が管理している?
サ高住の補助金は、国土交通省が進める「スマートウェルネス住宅等推進事業」に含まれます。この事業は、「高齢者、障がい者、子育て世帯等の多様な世帯が安心し健康に暮らすことができる住環境(スマートウェルネス住宅)」の実現を目指すもので、「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」「セーフティネット住宅改修事業」「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」「地域生活拠点型再開発事業」の事業に分類されます。この中の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」が、サ高住の補助金対象となっています。
●「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」のサイトをご確認ください。
●「令和2年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業の募集」にて、手順や募集期間もぜひご確認ください。
【税制】サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)における税制優遇
次にご紹介するのは、サ高住経営における固定資産税や不動産取得税に関する税制優遇です。毎年払う固定資産税と一度払う不動産取得税に関して軽減・減額という形で優遇があります。
固定資産税に関する税制優遇
5年間税額について2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲内において市町村が条例で定める割合を軽減します。(一般新築特例は1/2軽減)
要件
- 床面積:30㎡以上/戸(共用部分含む。一般新築特例は40㎡以上/戸)
- 戸数:10戸以上
- 補助:国又は地方公共団体からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
- 構造:主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること等
不動産取得税に関する税制優遇
家屋は課税標準から1200万円控除/戸(一般新築特例と同じ)、土地は指定のいずれか大きい方の金額を税額から控除。(一般新築特例と同じ)
要件
- 床面積:30㎡以上/戸(共用部分含む。一般新築特例は40㎡以上/戸)
- 戸数:10戸以上
- 補助:国又は地方公共団体からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
- 構造:主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること等
●「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムのサービス付き高齢者向け住宅供給促進税制の概要[PDF]」のサイトをご確認ください。
【融資】サービス付き高齢者向け住宅に対する住宅金融支援機構の融資
最後にご紹介するのは、サ高住建設における融資です。
お申込みいただける方
<次のすべてに当てはまる方>- 返済期間を通じてサービス付き高齢者向け賃貸住宅を適切に経営し、確実な返済が見込まれる方
- 個人のお申込みの場合で、お客さまの年齢が満65歳以上のときは、満65歳未満の後継者と連名によりお申込みいただける方
- 法人のお申込みの場合で、機構が必要と認めるときは、法人の代表者と連名によりお申込みいただける方
- 建設される土地について所有権または借地権(地上権・賃借権)をお持ちの方(取得される予定の方を含みます。)
- 融資の返済に関し、十分な保証能力のある法人または個人の連帯保証人をつけていただける方(条件により別途詳細備考あり)
- 個人(日本国籍の方または永住許可等を受けている外国人の方)または法人
資金の使途
融資の対象条件を満たすサービス付き高齢者向け賃貸住宅の建設資金融資額
融資対象事業費の100%以内(10万円以上、10万円単位)
<融資対象事業費>
建築主体工事費、電気工事費、給排水衛生工事費等の本体工事費および屋外附帯設備工事費、既存建物の除却工事費、開発工事費、設計費、工事監理費、敷地測量費、土地取得費など
●「住宅金融支援機構のサービス付き高齢者向け賃貸住宅を建設するための住宅ローン」のサイトをご確認ください。
サ高住への、国からのサポートはいつまで行われる?
令和2年度の補助金(募集期間)は、~令和3年2月26日(金)までです。税制優遇(適用期限)・融資(申込受付期限)についてはいずれも、~令和3年3月31日(水)までとなっております。
受付の状況によって変化する可能性もあるので、該当する方はお早めに申請するのがいいでしょう。
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、「高齢者住まい法」が改正された後の2011年10月に登場しました。
特別養護老人ホームの待機者問題は当時からあり、有料老人ホームは料金がネックとなって入居が難しい利用者もいることから、その代わりとなる施設の登場に期待が寄せられていました。
そして期待の中登場した「サービス付き高齢者住宅」は、今回述べたような国の施策が適用されています。「サービス付き高齢者向け住宅」の経営をご検討の皆様は、補助金や補助制度・税制優遇の活用をぜひ検討するといいでしょう。
最適なナースコールシステムの導入で、サ高住のコストを削減?!
「サービス付き高齢者向け住宅」開設時の費用を抑えるなら、施設設備の選択も重要です。
サ高住では、すべての入居者に対して安否確認・生活相談サービスを提供することが必要です。そのため、緊急通報システムやナースコール設備の導入を検討することになります。
ナースコールは、これまでの大規模病院向けのシステムだけではなく、介護施設向けに最適化されたシステムも登場しています。介護施設向けナースコールなら、必要な機能を備えながら、不要な機能を省いて低コストでの導入も可能となります。
新型ナースコール「Yuiコール」
※参考・出典
【1】サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
【2-1】スマートウェルネス住宅等推進事業-サービス付き高齢者向け住宅整備事業
【2-2】スマートウェルネス住宅等推進事業(PDF)-国土交通省
【3】住宅金融支援機構-サービス付き高齢者向け賃貸在宅建設融資