高齢者の誤嚥性肺炎とは?原因・リスクと予防のポイント
高齢者の肺炎の中でも、特に注意したいのが「誤嚥性肺炎」です。
食事中にむせる、食べ物を飲み込みにくい、以前より食事に時間がかかる――。
こうした変化は、単なる「年齢によるもの」と思われがちですが、誤嚥性肺炎につながるサインかもしれません。
介護施設では、日々の食事や口腔ケア、体調の変化を注意深く観察することが、誤嚥性肺炎の予防につながります。
誤嚥性肺炎とは?

「誤嚥(ごえん)」とは、本来なら食道へ入るはずの食べ物や唾液などが、誤って気管に入ってしまうことです。
高齢になると、喉や舌などの筋肉、飲み込む機能が低下することがあります。また、咳をする力や反射も弱くなるため、気管に入ったものを外へ出しにくくなります。
さらに、口の中には多くの細菌が存在しています。
そのため、唾液や食べ物と一緒に口腔内の細菌が肺へ入り込むことで、肺炎を引き起こすことがあります。
これが「誤嚥性肺炎」です。
厚生労働省も、誤嚥性肺炎は主に口腔内の細菌が肺に入り込むことで起こり、高齢者では嚥下機能や咳反射の低下などによってリスクが高まるとしています。
高齢者が誤嚥性肺炎になりやすい理由
高齢者では、加齢や病気などによって、食べる・飲み込むための機能が少しずつ低下していくことがあります。
特に注意したいのが、次のような変化です。
飲み込む力が低下する
舌や喉の筋肉が衰えると、食べ物をうまくまとめたり、飲み込んだりすることが難しくなります。
「食べ物が喉につかえる」
「飲み込むのに時間がかかる」
といった変化が見られる場合は注意が必要です。
咳をする力が弱くなる
健康な人であれば、食べ物や唾液が気管に入ると、咳によって外へ出そうとします。
しかし高齢者では、咳反射が低下していることがあります。
そのため、本人が気づかないまま誤嚥してしまう「不顕性誤嚥」が起こることもあります。
「むせていないから大丈夫」とは限らないことが、誤嚥性肺炎の難しいところです。
口腔内の細菌が増える
歯みがきや入れ歯の清掃が十分にできないと、口の中に細菌が増えやすくなります。 その状態で唾液などを誤嚥すると、細菌が肺に入り、肺炎につながる可能性があります。 日本歯科医師会も、高齢者の誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが重要だとしています。
こんな変化があったら要注意
日々の生活の中で、次のような変化がないか確認してみましょう。
- 食事中によくむせる
- 食後に咳が続く
- 水やお茶でむせる
- 食べ物を飲み込みにくそうにしている
- 食事に時間がかかるようになった
- 食べこぼしが増えた
- 声が以前よりも濁ったようになった
- 唾液が多くなった
- 食欲が低下している
- 体重が減ってきた
- 発熱や咳、痰が増えている
- 口腔内が汚れている
ただし、誤嚥性肺炎は必ずしも「むせる」という症状が出るとは限りません。厚生労働省も、むせがなくても誤嚥性肺炎を否定できないとしています。
口腔ケアを習慣にする
歯みがきや舌の清掃、入れ歯の洗浄などによって、口の中を清潔に保ちましょう。 口腔内の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎の予防につながります。 また、定期的に歯科医師・歯科衛生士などによるチェックを受けることも大切です。
食事中の姿勢を整える
食事をするときは、できるだけ安定した姿勢をとることが重要です。 身体が大きく傾いていたり、頭が後ろに反った状態になっていたりすると、飲み込みにくくなる場合があります。 本人の状態に合わせて、適切な姿勢を整えましょう。
食事の形態を見直す
硬いもの、パサパサしたもの、水分の多いものなど、飲み込みにくい食品は人によって異なります。
「以前は食べられていたから」と同じ食事形態を続けるのではなく、嚥下機能の変化に合わせて食事形態を見直すことが大切です。
必要に応じて、医師や歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの専門職と相談しましょう。
食事中の様子を観察する
「今日はいつもよりむせている」
「食べるスピードが遅い」
「途中で疲れてしまう」
このような小さな変化を見逃さないことも重要です。
普段の状態を把握しておけば、いつもと違う変化にも気づきやすくなります。
体調の変化を早めに確認する
誤嚥性肺炎では、咳や痰、発熱などが見られることがあります。
高齢者の場合、典型的な症状がはっきり出ないこともあるため、
「なんとなく元気がない」
「食事量が減った」
「いつもより眠そう」
といった変化も含めて、普段との違いを確認することが大切です。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
介護現場では「小さな変化を見逃さない」ことが重要
誤嚥性肺炎の予防では、特別な対策だけでなく、毎日の観察が重要です。
例えば、
「食事中にむせた」
「水分を飲む量が減った」
「食後に咳が出た」
「いつもより食事に時間がかかった」
こうした情報を記録しておくことで、利用者様の状態変化を把握しやすくなります。
厚生労働省も、誤嚥性肺炎の予防ではリスクを評価し、生活の中での変化を捉えながら、多職種で連携してケアを行うことの重要性を示しています。
誤嚥性肺炎の予防は「毎日の積み重ね」から
誤嚥性肺炎は、高齢になることで誰にでも起こる可能性があります。
だからこそ、
口腔ケアを行う
↓
食べやすい姿勢をつくる
↓
本人に合った食事を提供する
↓
食事中の様子を観察する
↓
小さな変化を記録する
↓
必要に応じて専門職へつなぐ
という日々の積み重ねが大切です。
「むせていないから大丈夫」ではなく、普段の状態を知り、いつもと違う変化に早く気づく。
それが、高齢者の誤嚥性肺炎を予防するための大切な一歩です。
※※本記事は誤嚥性肺炎に関する一般的な情報を紹介するもので、診断や治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、医師や歯科医師などの専門家へご相談ください。
出典・参考資料
- 厚生労働省:介護現場における感染症対策資料「第2章 個別の感染症対策」(PDF)
- 一般社団法人 日本呼吸器学会:日本呼吸器学会「A-12 誤嚥性肺炎」
- 公益社団法人 日本歯科医師会:日本歯科医師会「今月のおすすめコンテンツ『誤嚥』」
- 日本歯科医師会「8020日歯TV」:8020日歯TV「高齢期誤嚥性肺炎」
- 一般社団法人 日本老年医学会:日本老年医学会「用語別関連リンク集」
- 日本老年医学会・専門医制度 事例集:日本老年医学会「誤嚥性肺炎を繰り返す症状」







