介護の現場~一人勤務もある、少人数夜勤の実態と対策
介護施設は24時間対応。日中だけでなく夜間も必要な介護では、どうしても夜勤の少人数対応が求められます。施設規模によっては一人で夜勤を行うケースも。少人数の夜勤をなるべく負担をかけずに回すにはどのようにしたらよいのか、その対策まで考えてみます。
目次
介護施設夜勤の現状とは?
夜勤がある介護施設は?
昼夜問わず稼働する施設、つまりほとんどの施設で夜勤はかかせません。
具体的には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護型療養病床、短期入所生活介護(ショートステイ)、小規模多機能型居宅介護施設、有料老人ホーム、グループホーム等があります。
また、日帰りのデイサービスなどでも一部ショートステイを実施している施設もあります。そのような施設であれば夜間勤務が必要となります。
介護施設の夜勤の仕事内容は?
仕事内容は施設によって多少異なりますが、
○食事の準備と介助○就寝前、服薬の準備と介助○着替えなどの介助○排泄の介助(おむつ交換等)○巡回(見回り)○ナースコールの対応○状況の記録…となっており、業務内容としては日勤と大きな差はありません。
介護施設の夜勤の勤務体制は?
夜勤のシフトと時間
施設によって異なりますが、勤務体制は「2交替」が大半を占めています。そこで、勤務時間が長時間勤務となるケースも多いように見受けられます。
日本医療労働組合連合会が行った2016年の介護施設夜勤実態調査結果によると、2交替夜勤の体制を取っている割合が90.2%と、介護施設全体の九割を占めていることがわかりました。また、夜間勤務が16時間以上となる施設は全体の60%となっております。
夜勤の日数(回数)
一ヶ月の夜勤日数(回数)に関して法規制はありませんが、看護師確保指針により「月8日以内(2交替夜勤に換算すると4回以内)」という指針が出されています。しかし、多くの施設では人員不足などの問題から実現できていません。中には夜勤が月10日以上という施設もあり、多くの施設が一人体制をとっているという勤務体制となっています。
介護施設の夜勤が抱える問題
介護施設の夜勤は辛い?
全労連が2014年度に行った介護施設で働く職員へのアンケートによると、「夜勤を負担に思いますか?」という質問に対して、回答者の69.9%…約七割のスタッフが「負担に思う」と回答しています。
では、なぜ多くの職員が夜勤を負担と感じているのでしょう?
夜勤を負担に思う理由(1)少人数(一人)での夜勤
まず前提として、介護業界は人手不足の傾向がつづいています。小規模施設においては夜勤スタッフは一人というケースも多いのが現状です。夜勤は定時巡回のほか、すべての業務を一人で行わなければならないというプレッシャーが大きいのではないでしょうか。
夜勤を負担に思う理由(2)急病等不測事態への対応
多くの介護施設では医療施設と異なり、急病等の場合に対応できる医療資格者がいません。また夜間勤務では夜勤者以外の職員がおらず、緊急時の対応が全て夜勤スタッフに委ねられています。このような不測事態への対応も夜間勤務の負担意識が生じる要素となっているのでしょう。
夜勤を負担に思う理由(3)長時間となる勤務
人手不足にある施設では、夜勤が月に何度も入っているシフトや一人体制により実質的に休憩をとることができない勤務などが見られます。夜勤と言えども業務内容は日中行っている内容と変わらず忙しく、ナースコールや緊急事態への対応もしなければなりません。
…これらのことから、業務改善を行っていかなければ、この先ますます職員の負担が増していくと思われます。
介護施設の夜勤は退職の原因になる?
夜勤が介護職員の負担になっていることを述べましたが、夜勤がキッカケで退職してしまう…ということもあるのでしょうか。全労連のアンケートで、「こんな仕事、もうやめたい」と思うことがありますか?という調査の結果では次のとおりになっています。
やめたいと「いつも思う」が8.7%、「ときどき思う」が48.6%となっており、残念ながら、合わせると半数以上の介護職員が「思う」と答えています。
そこでやめたい理由を3つまで解答してもらった所、介護の仕事を辞めたいと思う一番の理由は「賃金が安いから」だと半数近い回答者が答えています。次に「仕事が忙しすぎる」、「体力が続かない」、「達成感・やりがいがない」のあと、5番目に「夜勤がつらい」の15.6%が続いています。
「夜勤のつらさ」は退職の主要因ではありませんが、別の調査によると「夜勤を負担に思う」と答えた人のうち約7割人が仕事を辞めたいと「思う」と回答したものもあります。
このことから「夜勤のつらさ」がすぐに退職理由になるわけではないが、退職意思へのきっかけにはなっているのかもしれません。
介護施設の夜勤の問題解決に向けて
介護施設の置かれている状況について見てきましたが、介護の性質上、夜勤をなくすことはできません。
日中よりも大きくなりがちな夜勤職員の負担を少しでも減らすにはどういった対策を講じればいいのでしょうか?
ここでは勤務体制改善による対策と、サポートシステム・機器導入による対策のふたつに分けて考えてみます。
勤務体制の見直しについて
スタッフが働きやすいような体制を。
夜勤スタッフのバランスを考える
まず、できるだけ一人での夜勤を減らしたいですね。それが難しい場合、3交替制を検討してみるのもよいでしょう。
3交替制では、「勤務と勤務の間が少なく休息が取りづらい」「2交代制と比べ連続した休みが取りづらい」などのデメリットもあります。
しかし、2交代制に比べ「3交替制は連続勤務時間が短く済む」というメリットがあります。
とくに夜間勤務では精神的なプレッシャーも大きく、3交替制による勤務時間の短縮は負担軽減の効果が期待できるでしょう。
夜勤専門の部隊を作る
夜勤に関する悩みには、「生活リズムが乱れることがつらい」をあげる人もいます。また、子供のいる主婦のスタッフであれば、「夜間勤務は家庭に負担がかかる」という現状があります。しかし、その分他のスタッフに負担がかかるようでは双方ともに疲弊してしまいます。
そこで夜勤を分業とする考え方があります。夜勤は夜勤専門の部隊を作り、その分手当を厚くするという考え方です。
また、必要に応じて出勤してもらえる夜勤バイト・派遣スタッフの活用も一人夜勤を避けるためには有効になると思われます。
最新の介護サポートシステム導入で改善
夜勤の現場で体制を整えていくことは重要ですが、人員確保が難しかったり、コスト面から難しかったりする場合もあるでしょう。そんなとき検討したいのが、業務をサポートする機器やシステム、サービスです。
最近では、少人数時のスタッフの業務負担を軽減しながら費用対効果も高い製品やシステムが多く登場しています。
介護需要がますます高まる今、介護をサポートする最先端の便利グッズやIoT技術を用いた介護支援機器の検討をしてみても良いのではないでしょうか。
24時間365日、自動で見守るシステム
夜間勤務において施設全体を見守るのは大変なことです。とくに一人勤務であればなおさら負担が大きくなります。そんな時、人に代わって施設全体だけでなくさらに居室内の入居者を見守るシステムがあります。
脱落防止のベッドセンサーや徘徊防止のドアセンサーなどは以前からありましたが、最新の見守りシステムでは、例えば、心拍数や呼吸数などのバイタル情報や温度湿度などの室内情報を常時モニタリングし異常があれば通報することが可能です。入居者の体調変化や室内環境などの状態をスタッフセンターに居ながらに把握することもできるので、巡回頻度が下げられたり、異常発生時の素早い対応が可能になります。
スタッフの過剰な気遣いや緊急対策をすばやくサポートできるので、業務負担の軽減がはかれます。
▼最新の見守りシステムについてはこちらもご覧ください。
介護を円滑化!これからの介護施設に必要な見守りシステムって?
ハンディナースの導入(PHS・スマートフォン)
すでにご存知かと思いますが、移動しながら呼出しが受けられるハンディナースシステムがあります。
最新のハンディナースシステムなら、手元のハンディナース端末に呼出しのあった居室の番号も表示されるので、施設内を移動中であっても、スタッフセンターにいるのと同じように対応できます。呼出しがあるたびにスタッフセンターに戻る必要がなく、少人数での呼出し対応もスムーズに行うことができます。
また、中には機能ボタンを持った多機能ハンディナースもあり、電気錠の開閉や、館内放送、外線電話や内線転送など、手のひらサイズでフル操作が可能なものもあります。
手元でいつでも緊急呼出し対応や各種操作ができるので、職員ひとりひとりの負担を軽減しながらケアサービスの向上も図れるでしょう。
また、最近ではスマートフォンをハンディナースとして活用できるシステムもあります。スマートフォン1台で2役、後述の「介護記録管理システム」の入力端末とハンディナースとして使え、スタッフの業務負担も軽減されます。
▼ハンディナースに関してはこちらもご参照ください。
どこでもコール対応『ハンディナースコール』
介護記録管理システム
毎日の介護記録(バイタル・入浴・送迎・食事・レク・排泄など)作業を補佐し、日誌作成や請求業務をサポートする「介護記録・管理システム」があります。
これは、日々の記録をサポートし職員の記録負担を軽減することが出来るほか、請求漏れなどを防ぐため施設運営にとっても有用なシステムです。
また、最近ではこの「介護記録管理システム」とナースコールが連動したシステムもあり、ナースコールの呼出し履歴も「介護記録管理システム」に自動記録されるので、入力・記録・転載等の業務負担を大幅に軽減することができるでしょう。
さらに、介護記録システムと請求ソフトとの連携で、請求業務負担の軽減もはかれ、施設全体の業務改善が可能になります。
▼介護記録管理システムとナースコールの連動に関してはこちらもご参照ください。
介護記録管理ソフト連動で業務の効率化と負担軽減
まとめ
介護士にとって負担を感じる夜勤。そこにはさまざまな理由がありましたが、夜間勤務は介護施設にとって必要であり、少人数での対応も必要になってきます。
人手が足りないから夜勤が大変なのは仕方ない、どこの施設もそれで回しているから仕方ない……これでは、介護スタッフの人員不足にも繋がり、ケアサービスの質の低下にもつながってしまいます。
夜間勤務への対策は、勤務体制を整えるのと並行し、業務負担を軽減する最新の機器やシステム、サービスの導入も積極的に考慮することが必要です。
出典・参考資料
○1 医労連:「2016年度介護施設夜勤実態調査結果」資料[PDF]
○2 全労連:「介護施設で働く労働者のアンケートとヘルパーアンケート報告集(2014年度)」資料[PDF]